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助成金レポート

中小企業が新卒求人をする時に注意すべきポイントと助成金の活用

2017年12月号

新卒求人申込書に追加された「青少年雇用情報欄」とは?

平成29年3月1日より、ハローワークに新卒者向けの求人(大卒等、高卒)を申し込む際には「青少年雇用情報欄」が設けられた新しい様式を使用することになりました。これは、若者雇用促進法によって「職場情報の積極的な提供」が義務づけられているからです。

「青少年雇用情報欄」を設けることで、新卒者等に労働条件を的確に伝えることだけでなく、「平均勤続年数」や「研修の有無および内容」といった職場情報を提供できるようになります。そうすることで、新卒者等が企業の職場情報を理解した上で応募してくるようになり、結果としてミスマッチによる早期離職が解消され、若者が充実した職業人生を歩んでいくための適職選択の支援だけでなく、企業が求める人材の円滑な採用などにも役立ちます。

この「青少年雇用情報欄」で情報提供が求められている項目は、以下の通りです。

<募集・採用に関する状況>
・過去3年間の新卒採用者数・離職者数
・過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
・平均勤続年数
・参考値として可能であれば平均年齢

<職業能力の開発・向上に関する状況>
・研修の有無及び内容
・自己啓発支援の有無及び内容
・メンター制度の有無
・キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
・社内検定等の制度の有無及び内容

<企業における雇用管理に関する状況>
・前年度の月平均所定外労働時間の実績
・前年度の有給休暇の平均取得日数
・前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
・役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合

応募者等や求人申込みをしたハローワーク、職業紹介事業者(職業紹介事業者としての学校を含む)等から求めがあった場合は、上記の3項目それぞれについて1つ以上の情報提供をすることが義務となっています。新卒者向けの求人を行うのであれば、企業の規模は問いません。

では、このようなルールが設けられることになった背景にある「若者雇用促進法」とはどのような法律なのでしょうか?

 

若者雇用促進法とは?

少子化に伴い労働力人口が減少する中、若者が安定した雇用の中で経験を積みながら職業能力を向上させ、働きがいを持って仕事に取り組んでいくことができる社会を築くことは、全員参加型社会の実現を図り、我が国全体の生産性の向上を図る上で、ますます重要な課題となっています。

若者雇用促進法は、若者の適切な職業選択の支援に関する措置、職業能力の開発・向上に関する措置等を総合的に規定した法律であり、平成27年度10月1日から施行(一部、平成28年3月1日または平成28年4月1日から施行)されています。

この若者雇用促進法のポイントは、以下の3点です。

①職場情報の積極的な提供(平成28年3月1日施行)
新卒段階でのミスマッチにおける早期離職を解消し、若者が充実した職業人生を歩んでいくため、労働条件を的確に伝えることに加えて、若者雇用促進法において、平均勤続年数や研修の有無及び内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供する仕組みを創設。(上述の通り)

②ハローワークによる求人不受理(平成28年3月1日施行)
ハローワークにおいて、一定の労働関係法令違反があった事業所を新卒者などに紹介することのないよう、こうした事業所の新卒求人を一定期間受け付けない仕組みを創設。

③ユースエール認定制度(平成27年10月1日施行)
若者雇用促進法において、若者の採用・育成に積極的で若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業について、厚生労働大臣が「ユースエール認定企業」として認定する制度を創設。

 

厚生労働大臣が認定する「ユースエール認定制度」

「ユースエール認定制度」とは、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業
(常時雇用する労働者が300人以下)を若者雇用促進法に基づき厚生労働大臣が認定するものです。

この認定を受けるための基準は以下の通りです。

① 学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること

② 若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること

③ 以下の要件をすべて満たしていること
・直近3事業年度の新卒者など正社員として就職した人の離職率が20%以下。ただし、採用者数が3人又は4人の場合は離職者数が1人以下。
・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと
・前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上
・直近3事業年度で、男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の育児休業等取得率が75%以上

④以下の雇用情報項目について公表していること
・直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
・研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定の制度の有無とその内容
・前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合

⑤過去に認定を取り消された場合、取り消しの日から起算して3年以上経過していること

⑥過去に⑦から⑫までに掲げる基準を満たさなくなったため認定辞退を申し出て取り消した場合、取消しの日から3年以上経過していること

⑦過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと

⑧過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと

⑨暴力団関係事業主でないこと

⑩風俗営業等関係事業主でないこと

⑪雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと

⑫重大な労働関係法令違反を行っていないこと 

この認定基準の中で重要なポイントは「職場情報の積極的な提供」、すなわち雇用に関するデータを把握して、それを外部に公表することを求めていることです。この考えは女性活躍推進法(えるぼし認定)とも共通しており、今後の国の労働施策の方向性を示したものと言えるでしょう。また、これからの人事労務管理のトレンドとしても押さえておきたい重要な視点です。

特に、「労働時間」や「有給休暇の消化率」、「育児休業の取得率」、「役員・管理職に占める女性の割合」といった項目に重点が置かれ、数値管理を求めていることがわかります。

 

ユースエール認定を受ける企業のメリット

若者雇用促進法基づく認定企業(ユースエール認定企業)になると、以下のようなメリットがあります。

①ハローワーク等で重点的PRの実施
「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点で認定企業を積極的にPRすることで、若者からの応募増が期待できます。また、厚生労働省が運営する、若者雇用促進法に基づいて職場情報の提供を行う企業の情報を検索できるデータベース「若者雇用促進総合サイト」にも企業情報が掲載されますので、自社の魅力を広くアピールすることができます。

②認定企業限定の就職面接会等への参加
各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などについて積極的に案内してもらえますので、正社員就職を希望する若者などの求職者と接する機会が増え、より適した人材の採用を期待できます。

③自社の商品、広告などに認定マークの使用が可能
認定企業は、若者雇用促進法に基づく認定マークを商品、広告などに付けることができます。認定マークを使用することによって、若者雇用促進法に基づく認定を受けた優良企業であるということを対外的にアピールすることができます。

④若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算
若者の採用・育成を支援するため、認定企業が次の各種助成措置を活用する際、一定額が加算されます。
 ・キャリアアップ助成金
 ・人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)
 ・トライアル雇用助成金
 ・特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)

⑤日本政策金融公庫による低利融資
株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業・国民生活事業)において実施している「地域活性化・雇用促進資金(企業活力強化貸付)」を利用する際、基準利率から-0.65%での低利融資を受けることができます。

⑥公共調達における加点評価
公共調達のうち、価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う場合は、契約内容に応じて、ユースエール認定企業を加点評価するよう、国が定める「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」において示されました。

 

「若者の雇用促進」に使える助成金

若者の雇用促進に取り組む事業主を支援するための助成金として、今回は「職場定着支援助成金(個別企業助成コース)」をご紹介します。

この助成金は、雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度)の導入などを通じて従業員の離職率の低下に取り組む事業主に対して助成するもので、雇用管理改善を推進し、人材の定着・確保と魅力ある職場の創出を目的としています。事業主が、新たに雇用管理制度の導入・実施を行った場合に制度導入助成(1制度につき10万円)を、雇用管理制度の適切な運用を経て従業員の離職率の低下が図られた場合に目標達成助成(60万円)を支給します。

たとえば、従業員の離職率の低下を図るために「研修制度」を導入すると制度導入助成として10万円が支給され、それによって実際に離職率が低下した場合には目標達成助成として60万円が支給されるというものです。新卒求人申込書の「青少年雇用情報欄」では、「研修の有無およびその内容」や「メンター制度の有無」などの情報を公表することになっていますので、この助成金を活用して制度を整備することが可能です。

この助成金(研修制度の導入)を受給するためのポイントは、次の通りです。

・通常の労働者の職務の遂行に必要な知識、スキル、能力の付与を目的にカリキュラム内容、時間等を定めた教育訓練・研修制度であること。(支給対象となる研修の例:新入社員研修、管理職研修、幹部職員研修、新任担当者研修、マーケティング技能研修、特殊技能研修 等)

・生産ライン又は就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる教育訓練等であること(Off-JTであること)。

・1人につき10時間以上(休憩時間、移動時間等を除く)の教育訓練であること。教育訓練等の時間のうち2/3以上が労働関係法令等により実施が義務付けられていないものであること。

・当該時間内における賃金の他、受講料(入学金及び教材費を含む)、交通費等の諸経費を要する場合は、全額事業主が負担するものであること。

・教育訓練等の期間中の賃金については、通常の労働時の賃金から減額されずに支払われていること。教育訓練等が所定労働時間外又は休日等に行われる場合は、割増賃金が支払われていること。

・当該制度が実施されるための合理的な条件及び事業主の費用負担が労働協約又は就業規則に明示されていること。

・雇用管理制度整備計画期間内に退職が予定されている者のみを対象とするものでないこと。

上記以外にも細かい要件がありますので、詳細については厚生労働省のホームページ等でご確認下さい。

 

まとめ

労働力人口が減少する現状においては、新卒者を採用して、しっかりと教育をして定着を図ることが、これからの企業の人材活用戦略として重要になってくるでしょう。また、若者雇用促進法によって、職場情報を積極的に提供(公表)することが求められています。こうした流れを受けて、今後は自社の雇用に関するデータ(労働時間、有給休暇の取得率、離職率、平均勤続年数等)を数値で把握しておく必要性が高まってくることが予想されます。
これからの企業は適切な人事労務管理を行い、自社の雇用に関するデータを積極的に公表することで、「若者から選ばれる会社」になることを考えなければなりません。


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